「民泊の許可申請って具体的に何をすればいいの?」という方向けの記事です。
この記事の内容
- 民泊申請の種類を解説【3種類】
- 実は申請の前にやることがたくさんあります【確認事項6つ】
- 申請の窓口や手順をわかりやすく解説します
うちの嫁さんが2014年〜2018年くらいまでの4年弱の期間ホストをやっていて、僕はサラリーマンをやりながらマーケティング部分や人手が足りないときの手伝いをしていました。
スペックは以下の通り。
- 都内で平均3部屋を運用
- 黒字化まで約半年
- 平均稼働率95%
- 後半2年はスーパーホスト認定
- 年商500〜600万円
という感じ。
都内でホストをやっていましたが、札幌へのUターン移住と法改正のタイミングで一旦終了しましたが、法改正後の今、どんな手続をすれば民泊ホストになれるのかを改めてまとめました。
ということで、早速本題です。
はじめに:申請ってちゃんとしておいた方がいい?
そもそもの話ですが、結論から言うと面倒でも申請して許可を取るべきです。
というか、民泊新法が施行されている現環境では無許可営業は普通に「違法行為」とみなされてしまうので。
個人では負いきれない賠償責任に発展するリスクがある
たとえば、一般住居と宿泊施設の保険では、条件も補償内容も全く違います。
万が一火災にでもなろうものなら、違法営業を理由に保険が適用されない可能性も高くなります。
物損に留まらず死傷者が出たなんて事態になると、とてもじゃないですが個人で背負いきれるようなレベルではありません。
自分と宿泊者、双方を守る意味でも必ず許可を取って運営しましょう。
無許可営業の取り締まり事例
- 保健所の改善指導を無視し続け、旅館業法違反で逮捕
- 無許可で転貸していた運営者に対して、貸主が解約通告(事実上追い出し)
いずれも実際にあった実例。
「こっちから言わなきゃバレない」と思いがちですが、近隣住民の通報、同居している所有者が保健所に現地確認を依頼するなど、第三者からの通報で発覚するケースがほとんど。
僕も元ホストなのでよくわかりますが、いろんな国からいろんな人が来るので、想像もしない
ぶっちゃけ申請手続は死ぬほど手間がかかりますが、この記事を参照しつつ手続きをしてみてください。
ちなみに:民泊申請代行サービスもある!
裏を返せば、こんなサービスがあるくらい手続は複雑怪奇で煩雑です。法律って増える一方で減りませんからねぇ…。
ちなみに行政書士さんが代行してくれます。
代行を依頼するとかなり費用がかかるので自分でやりたいところですが、くれぐれもお覚悟を。
民泊の申請区分3パターンと全体の流れ
ということで、具体的な内容を見ていきましょう。
申請には下記3つの区分があります。
- 従来の旅館業法に沿って申請する
- 簡易宿所として申請する
- 特区民泊として申請する
一応はこうなってるんですが、個人運営の民泊で従来の旅館業法に沿うのは非現実的です。
というのも、実は要件さえ満たしていればホテルや旅館として申請することもできるんですが、法律上OKでも条例ではNGみたいな作りになっているんですよね。
しかも自治体によって条例がまちまちです。
たとえば「ホテル業」として申請しようとすると、条件はこんな感じ。
【旅館業法】
洋式の構造・設備で、宿泊料を徴収して人を宿泊させる施設のうち、簡易宿所営業および下宿営業に当たらないもの。
【大阪市の条例】
宿泊者の需要を満たすことができる広さの食堂がある施設。
この例だと、「旅館業法はクリアしていても、十分な広さの食堂が無ければ、大阪市では許可が下りない」ということが起きるわけですね。
ちなみに、軽井沢町などのように「そもそも民泊自体禁止」という自治体も少なからずあります。
申請区分の決め方
まずは許可を取りたいエリアが「特区民泊」の条件を満たしているかをまず確認して、該当していなければ「簡易宿所」として申請すればOKです。
「特区民泊?簡易宿所…?」という方は先に下記の記事を読んでいただいた方が理解しやすいと思います。
>> 民泊とは?定義・法律・現行ルールをわかりやすく解説する
申請する窓口は?
窓口は各地域の保健所ですが、いきなり保健所に行っても申請を受け付けてもらえません。
保健所はあくまで窓口で、要件を満たしていれば申請を受け付けるというだけ。それ以外の部分は全て自分でやる必要があります。
申請の要件を全てクリアしていることが確認できたら、最後に保健所に申請するという流れです。
これを踏まえて、「簡易宿所」と「特区民泊」は申請方法が異なるので、それぞれ解説していきます。
許可申請の手順【簡易宿所の場合】
まずは一般的に最も多い申請区分である「簡易宿所」の申請方法です。
申請から運営開始までの手順
- 申請前の確認
- 申請条件を満たしているかどうかの確認(5項目)
- 旅館業許可申請書の作成・提出
- 保健所の現地調査
- 許可証の受領
上記の通り。
この内、①と②がなかなか手強いので順に解説していきます。
申請前にチェックすべきこと → 6つあります
多分ここが一番手間がかかる工程です。
- 保健所への事前確認
- 構造上の確認
- 営業可能エリアの確認
- 消防の確認
- 排水の確認
- 環境保全関連の確認
- 景観関連の確認
チェック項目は上記6つです。
ほとんどが役所での確認になりますが、地域によって部署名が違う場合があるので、用件を伝えて担当部署を教えてもらった方がいいかもです。
以下の要件全てを満たして初めて申請可能な土俵に乗ります。
逆にどれか1つでもNGだった場合、その時点で申請不可ということになります。
旅館業法シビアすぎん…?
同様に、もし民泊用の物件を新たに買う・借りる場合はこれらの要件を全て満たしていないと民泊営業ができないので、十分ご注意を。
① 保健所への事前確認
そもそも、民泊を運営しようとしている地域が営業可能かどうかの確認です。
民泊新法では「法律上はホテルや旅館を運営できない、住居専用地域でも営業が可能」ということになってるんですが、地方自治体の条例が優先されます。
ようするに、法律上OKでも自治体のルール次第ではNGということが起こりえます。
② 構造上の確認
確認窓口:建築指導課
確認内容:旅館業営業ができる建物(構造)か?
申請しようとしている建物が、建築基準法の基準を満たしているか?ということです。
余談ですが、建築基準法では、地域ごとに「○階層以上の建物は建てられないエリア」「ホテル・旅館の営業はできないエリア」など細かく決められているのです。
ちなみにこの部署は、建築基準法に基づく建築物の確認、申請、完了検査、違反建築物の是正指導、建築物の防災指導などをやっている部署です。
③ 営業可能エリアの確認
確認窓口:開発審査課
確認内容:営業が認められているエリアか?
申請しようとしている建物が、都市開発法とその地域の条例を満たしているか?ということです。
この部署は、都市計画法と照らし合わせて建設許可を出している部署です。
④ 消防の確認
確認窓口:物件の所在地を管轄している消防局
確認内容:物件が消防法の基準を満たしているか?
不特定多数の人が出入りする場所は、消防法の基準を満たす必要があります。
最後の許可申請のときに、法定に適合していることを証明する「消防法令適合通知書」が必要になります。
⑤ 排水の確認
確認窓口:下水道浄化センター
確認内容:水質汚染防止に関する条例の有無
「水質汚濁防止法」という法律があり、ホテルや旅館からの排水が下水管を痛めたり、浄水場の機能を損なわないよう、年1回の水質調査と記録が義務付けられています。
申請しようとしている物件の自治体に、民泊運営上の排水に関する条例が無いか、ある場合は基準をクリアする条件を確認する必要があります。
⑥ 環境保全関連の確認
確認窓口:環境保全課
確認内容:偽装申請防止に関する条例の有無
2000年頃から、旅館業法の許可を取った後、本来なら営業できないラブホテルを運営する「偽装ラブホテル」なるものが問題になっています。
こういったものを規制する条例がある地方自治体があるので、念のため確認しておきましょう。
⑦ 景観関連の確認
確認窓口:都市計画課
確認内容:景観に関する条例の有無
マンションの一室や一軒家などを申請する場合は、ほとんど問題にあることはありませんが、これも念のため条例の有無を確認しておきましょう。
旅館業許可申請書の作成・提出
全ての要件を満たしていることが確認できたら、ここでようやく申請書の作成です。
自治体によって提出書類が微妙に違うはずなので、必要書類を確認してから取り掛かりましょう。
提出を求められる可能性がある書類は以下のようなもの。
- 土地建物登記簿謄本
- 検査済証
- 状況見取図
- 配置図
- 平面図
- 構造設備の仕様図
- 水質検査成績書(温泉など水道水以外を使う場合のみ)
- 使用承諾書(自己所有物件じゃない場合のみ)
- 登記事項証明書(法人の場合のみ)
必要書類が揃ったら、管轄の保健所に提出します。
自分以外の人が所有する建物を借りて民泊運営をする場合、「転貸」(ようするに又貸し)という行為にあたります。
契約書に転貸を許可する特約がない場合、許可なく転貸した場合は違法行為となるので、必ず所有者の許可を取りましょう。
上記の「使用承諾書」が所有者の許可を証明する書類になります。
保健所の現地調査
提出した書類のチェックが終わると、書類と実物に相違が無いか現地確認が来ます。
この現地確認は申請者も立ち会います。
許可証の受領
ここまでの工程をすべてパスすると、晴れて許可証が交付されます。
(とんでもなく面倒くさい…。)
許可申請の手順【特区民泊の場合】
続いて特区民泊の許可申請の方法ですが、これは特定の条件がそろった地域でのみ申請できる方法です。
特区民泊とは何か?申請できるエリアはどこか?などを知りたい方は、下記の記事にある「民泊営業が許可される3つの形態」をご覧ください。
>> 民泊とは?定義・法律・現行ルールをわかりやすく解説する
特区民泊の審査基準
大きく分けると下記の3つです。
- 【法律】民泊を運営しようとしている地域が国家戦略特区に指定されているか、消防法などの各種法令に適合しているか
- 【自治体】その地方自治体が特区民泊を許可する条例を施行しているか、定められている条件をクリアしているか
- 【所有者】申請しようとしている物件が民泊を許可しているか
面倒くさいとしか言いようがないんですが、上記3者全てが民泊をOKしていないと、結果的に民泊運営はできません。
法律と自治体がOKしていても、マンションの管理規約で民泊NGを謳っていればNGです。
以降で解説する全ての項目をクリアしたのに、管理規約がNGだったなんてことになると、全ての作業が水の泡になるので、何よりも先にこの許可関係をクリアにしておきましょう。
地域によって条件がかなり異なる → 各自治体に確認しよう
特区民泊の法律(国家戦略特別区域法」では以下のように条件が設定されています。
- 出入口と窓は施錠できること
- 出入口と窓以外の仕切りが壁であること
- 適当な換気・採光・照明・防湿・冷暖房設備が備えられていること
- キッチン・浴室・トイレ・洗面所(キッチンとは別)の4つの設備があること
- 寝具・テーブル・イス・収納・調理器具や設備・清掃用具を備えていること
これを最低限の基準として、各自治体の条例で条件が付け足されている場合がほとんどです。
たとえば大阪市の場合は上記に加えて、
- 台所と洗面所は兼用ではなくそれぞれ必要
- 水道水、飲用水を供給できる設備が必要
- 調理器具は電子レンジ、コンロなどの加熱が可能なもの
- 掃除機・ゴミ箱・雑巾を備え付ける
さらに「浴室」の定義すらも自治体で違っていたりします。
例:浴室の定義の違い
・東京都大田区では浴槽が付いていることが条件
・大阪市では浴槽が無くても「浴室」とみなす
この他にも「トイレは洋式のみOK」といった条件を付けている場合もあります。
また、1人あたりの床面積について、東京都大田区では3㎡以上、大阪市では3.3 ㎡以上であることが望ましい、みたいなバラつきがあります。
こんな感じで、地域によって条件が異なるので、保健所などに確認してみてください。
申請に必要な書類
特区民泊の申請に必要な書類は下記の通りです。
- 申請者が個人の場合は住民票、法人の場合は登記事項証明書または定款
- 物件の賃貸借契約書、及び約款
- 施設の構造設備、外国人旅客の滞在に必要なサービス提供等の概要
- 物件付近の見取り図
- 居室内に備え付ける使用方法の案内書(ハウスルール)
- 施設の構造設備を明らかにする図面
滞在者名簿のテンプレート(滞在中の連絡先、本人確認記録を含む) - 消防法、関係法令に適合することを証明する書類の写し
- 水質検査成績書の写し
- 近隣住民への周知に使った資料、周知方法と実施結果を記録した書面
- その他、各自治体(市長等)が提出を求めた書類
※以下は賃貸物件・分譲物件の場合
- 貸主の特区民泊運営を承諾していることを証明する書類の写し
- 区分所有法に違反していないことを証明する書類の写し
保健所の現地調査
提出した書類のチェックが終わると、書類と実物に相違が無いか現地確認が来ます。
許可証の受領
ここまでの工程をすべてパスすると、晴れて許可証が交付されます。
(とんでもなく面倒くさい…。)
最後に:外注も駆使して賢く立ち回ろう
ということで、民泊の申請について解説してきました。
ぶっちゃけ、これらを全部自分でやろうとするのはあまり得策ではありません。
自分でやる一番の理由は「初期投資の節約」にあると思いますが、申請に1ヶ月かかるくらいなら、外注で準備期間を短くして、一日も早く運用を開始して売上で回収する方が賢いと思います。
空いた時間で客室の充実を図ったり、他のビジネスや会社の仕事をした方がその後の利益に繋がるかと。
ようやく運用開始にこぎつけても、今度は清掃やベッドメイキングといった作業が結構コンスタントに発生しますが、これも同じ。
もちろん自分でやればそれだけ利益率は高くなりますが、それにかかりきりになってしまうと他のことができないし、部屋数を増やそうにもすぐに限界が来ます。
「CaSy」や「タスカジ」といった「家事代行系」のシェアエコはこういった作業の外注とかなり相性がいいので、こういったものをうまく利用して「自分の稼働時間を確保する」ということを意識していくのがおすすめです。
「雇用を創出する」「利益を還元する」という意味で公益性も高まります。
民泊も会社経営と一緒で、「ビジネス全体の頭脳たる自分」が手足のように動いてしまうと、そのビジネスはなかなか育ちませんからね。
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