いまさらだけど「民泊」って何?
法律とかルールが複雑でよくわからない…
今でも副業としてできるの?
本記事ではこういった疑問に答えます。
本記事の内容
- 「民泊」って結局なに?【定義や経緯を簡単に解説】
- 民泊の法律やルール【短く簡単に解説】
- 今から民泊を始めるのはぶっちゃけ難しい【理由を解説】
- 民泊を始めるためにクリアしておくべき条件
この記事の信憑性
うちの嫁さんが2014年〜2018年くらいまでの4年弱の期間ホストをやっていて、僕はサラリーマンをやりながらマーケティング部分や人手が足りないときの手伝いをしていました。
スペックは以下の通り。
- 都内で平均3部屋を運用
- 黒字化まで約半年
- 平均稼働率95%
- 後半2年はスーパーホスト認定
- 年商500〜600万円
という感じ。
まだ「民泊」という呼び方が認知されていない2014年頃、民泊を運営して一人で月収200万を稼ぐ29歳の女子に知り合い、「これはビジネスチャンス!」と思ってその子にコンサルを依頼したのがキッカケでした。
前置きが長くなってしまいましたが、そんな経験から昨今の民泊事情についてわかりやすく解説します。
尚、前半ではタイトル通り「民泊とは?」ということにフォーカスしつつ、後半では「これから民泊を始めようか検討している人」に向けても少し触れています。
「民泊」とは?
宿泊用に個人(または企業)が提供する個人宅の一部、マンションの一室、空き別荘などに宿泊すること。
厳密には「個人が宿泊場所を貸すビジネスモデル」は「民泊サービス」と呼んで区別してるようですが、全部ひっくるめて「民泊」というのが一般的。
ホテルや旅館よりも規模が小さく、1部屋単位で貸し出すこと、宿泊場所が普通の民家やマンションの一室であることが特徴です。
民泊の歴史【ざっくり解説】
紆余曲折あって今の形に落ち着いてきた経緯があるので、その辺りのことをサクッとまとめていきます。
民泊が大流行したワケ
「宿泊場所を探している人」と「空き部屋・空き家などを有効活用したい人」をマッチングする、アメリカ発祥の「airbnb(エアビーアンドビー)」というプラットフォームが出現したのがキッカケ。
「宿泊業」といえば、資金力のある企業がホテルや旅館みたいな業態で運営する大掛かりなビジネスモデルでしたが、これが個人でも割と簡単にできるようになったと。
具体的には以下のような感じ。
・ホテル業などの知識や経験がないド素人でも集客が容易になった
・資金力の無い個人でもホテル業に参入できるようになった
・その結果、民泊だけでサラリーマンの年収以上に稼ぐ人が続出した
さらに、その経緯やノウハウをブログやSNSで発信する人が出てきて、徐々に内情が明るみになり「俺も俺も!」と参入するチャレンジャーが急増したのでした。
中には「これ絶対イケるわ!窮屈な社畜からはおさらばだぜ!」と会社を辞めて専業ホストになった人もいましたが、彼らは現在息をしているのか、無事を祈るばかりです。
今ではこの「個人が個人に何かをシェアする」という経済圏を「シェアリングエコノミー」と呼んでいて、民泊以外にも色々なカテゴリーが生まれています。
個人が民泊で稼げたワケ
人に貸せるような部屋や物件を持ってる人がそんなにたくさんいたのか?というと、実はそうではありません。
当時個人で稼いでいた人の多くが「自分の名義で賃貸物件を借りて、宿泊客に又貸しする」ということをやっていました。
具体的には下記のような感じです。
家賃10万円のマンションを一室借りる
→1泊10,000円で貸す
→10泊以上お客さんが入れば黒字
→利益が十分出たらまた新たに部屋を借りる
→以下繰り返し
中身がわかれば簡単ですよね。
外国人観光客がかなり多い時期(「爆買い」などがクローズアップされていた頃)で、都心部などでは集客に全く困りませんでした。
ちなみに、今でも正式な手順を踏めば当時と同じようなことはできますが、法改正で割とエグい制限が付いたことで、当時と同じようには稼げなくなりました。
詳しくは後述します。
参入者が増えた結果トラブル続発、法改正へ。
- 「普通の民家やマンションに毎回違う人が宿泊する」という特殊な環境
- 文化の違いによる迷惑行為、日本語が読めないことによるトラブル
- 民泊に旅行客が流れることで、既存企業の宿泊業にダメージを与える恐れ
こんなことが重なり、全国でありえないくらいトラブル続出。近隣住民も大家さんも激おこ、でもそれを規制する法律が無いという構図になり、法改正を余儀なくされました。
ようするに、新しいビジネスモデルに従来の古い法律が追いついていなかったという話です。
「営利目的の宿泊施設の営業」については、「旅館業法」という法律でルールが定められていました。
しかし、ここでいう旅館業は「ホテル」「旅館」「簡易宿所」「下宿」の4つで、「民泊」は定義されていませんでした。
法改正後、事態は沈静化したが…
ということで、無法地帯と化した民泊を規制するために法整備が進み、民泊ブームとトラブルの嵐はひとまず沈静化されました。
とはいえ、単純に沈静化したいだけなら個人の民泊ビジネスを禁止するのが一番手っ取り早いんですが、それがなかなかできない社会全体の背景もあります。
民泊を禁止できない理由
要因の1つが、外国人観光客の増加。
実は過去20年間で外国人観光客は6倍にも増えていています。
これによって起こっているのが、宿泊施設の不足です。
ホテルを建てようにも莫大な費用と期間がかかるので、観光客が増えたからといってすぐに不足を補うのは難しいと。
こんな背景もあって、民泊をうまく使ってこの問題に対処したい、という社会的な側面もあるので、全面禁止にしたくともできないわけです。
民泊を巡る法整備はまだ試行錯誤中
そもそも旅館業法が施行されたのは昭和32年。
言うまでもなく当時と今では共通点を探す方が難しいくらい環境が変わっているので、法改正や規制緩和は避けられません。
そうかと言って、緩和しすぎると感染症のリスクや犯罪リスクが高まることも予想できる。
僕ら個人からすると「めんどくさいルールばっか作りやがって!」と思いますが、マクロ経済の観点から考えるとそうそう簡単なことではないんですよね。
こんな背景を受けて国としては、
「懸念される課題(近隣トラブル、治安、衛生面など)への対応が適切に行われるよう、日本型民泊のビジネスモデルを構築して制度設計する必要がある」
という見解になっています。
ようするに、今後もルールが変わる可能性が高いと思っておいていいかと。
ということでここからは、法改正後(現行)の民泊周りのルールを見ていきましょう。
【現行ルール】住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?
2018年6月に、「住宅宿泊事業法」通称「民泊新法」が施行されました。
これが現行ルールになるので、ややこしい言い回しを排除しつつ特徴的な部分を解説します。
【原則】有償で民泊を運営する場合は全て許可が必要
許可が必要かどうかの境界線は「料金徴収の有無」です。
- 宿泊料を徴収する → 国の許可が必要
- 宿泊料を徴収しない → 国の許可は不要
そもそも料金をもらわないで泊めるのは身内か友達くらいなので、この定義が必要かどうかすら怪しいですが、一応こういうルールになっています。
もう少し詳しく言うと、
「営利目的で(ビジネスとして)、反復継続的に、有償で民泊をやるなら必ず国の許可が必要」ということです。
僕らからすれば「仲介サイトを使って宿を探している人を泊めてあげる」というだけのことですが、料金を徴収する時点で色々な法律に引っかかってきます。
これらの法律の条件を全てクリアしていないと、「違法営業」になってしまいます。
ちなみに、「休憩料」「クリーニング料」「体験料」などの名目で料金を徴収して「宿泊料じゃないよ!」と言い張っても、実質的に宿泊スペースや寝具の使用料とみなされる場合はすべて「宿泊料を徴収している」という扱いになります。
ぴえん。
建物の用途に関するルール → 大きく3つあります
- 法律上はホテルや旅館を運営できない「住居専用地域」でも営業が可能
- 自治体の条例に従う(営業できるエリアや期間を規制している場合)
- 管理規約で禁止しているマンションでは営業できない
ようするに、「地方自治体が許可している範囲で、かつ民泊禁止の建物で無ければ、国の許可を取れば民泊運営できるよ」ということになります。
【重要】年間営業日数の上限
- 年間営業日数は180日まで。
昔のように稼げなくなった一番の要因がこれです。
仮に民泊用に賃貸マンションを借りたとしても、営業できるのは年間180日まで、でも家賃は365日分かかるということで、黒字化がかなり難しいのが現状です。
又貸しでの民泊運営は、事実上ほぼ不可能になったと言えます。
とはいえ、個人での民泊運営が全面的にできなくなったかというと、そうではないです。
この辺りのことは「今から民泊をやるならクリアしておきたい条件」の項で解説します。
「家主居住型」と「家主不在型」
民泊施設が上記2種類に分類されました。
・個人が生活している(住民票がある)住宅であること
・ゲスト宿泊日にオーナーも宿泊している
・年間提供日数が一定の基準を満たすこと
「自分が旅行中に貸し出す」という場合は条件を満たしていないとみなされて、「家主不在型」に分類されます。
・個人が生活していない
・普段生活していてもゲスト宿泊日にオーナー不在
・「民泊施設管理者」が届け出されている
・年間提供日数が一定の基準を満たすこと
上記のように定義されています。
民泊営業が許可される3つの形態
民泊営業が可能な形態は、下記3種類に分類されています。
- 民泊新法で定める住居として貸し出す民泊
- 旅館業法で定める簡易宿所
- 民泊条例で定める国家戦略特区の民泊(=特区民泊)
言いたいことはわかりますよ…。何故こうもわかりづらいネーミングなのか。
とはいえ正式名称なので仕方ないのと、わかりやすく解説するのでお付き合いください。
民泊新法で定める住居として貸し出す民泊
これは民泊新法の項で解説した、「家主居住型」と「家主不在型」のことですね。
はい、次。
旅館業法で定める簡易宿所
「未定義だった民泊を、既存の旅館業法のグループに加えるよ」というもの。
前半の参考欄を再度引用します。
「営利目的の宿泊施設の営業」については、「旅館業法」という法律でルールが定められていました。
しかし、ここでいう旅館業は「ホテル」「旅館」「簡易宿所」「下宿」の4つで、「民泊」は定義されていませんでした。
ここに「簡易宿所」という単語が出てきましたね。
つまり、「旅館業法で元々定義していた簡易宿所というグループに民泊を加えて、旅館業法の許可申請ができるようにしよう」ということにしました。
無理矢理感が否めませんが、市民権が無かった民泊にとりあえずの措置ということで。
民泊条例で定める国家戦略特区の民泊(=特区民泊)
観光地や首都圏など、特に宿泊施設が不足しやすい地域に対して特例で許可される民泊形態のこと。
民泊の歴史の項で触れた「外国人観光客の増加による宿泊施設不足問題」などに対応するための措置ですね。
この形態で民泊ができる条件は以下の3つ。
- 民泊を運営する地域が、国から「国家戦略特区」の指定を受けている
- その地方自治体が民泊条例を制定している
- 上記を満たした上で許可を取る
- ゲストが2泊3日以上滞在する場合のみOK
①と②は自分で操作できないので、自分で民泊を運営しようと思っているエリアがこれらの条件を満たしていれば申請できる、という感じになると思います。
特区民泊が可能な地域(2020年2月現在)
- 東京都大田区
- 千葉市
- 大阪府・大阪市・八尾市
- 北九州市
- 新潟市
詳細はこちら。
※内閣府地方創生推進事務局(平成31年3月28日発表)資料より
「民泊運営の許可申請」とは具体的に何?
ここまでに何度も出てきている「許可」とは具体的に何をすれば取れるのか?という話です。
繰り返しになりますが許可が必要なケースは、「宿泊料を徴収して反復継続的に人を宿泊させる場合」です。
申請時の選択肢は下記の3つ。
- 従来の旅館業法に沿って申請する
- 簡易宿所として申請する
- 特区民泊として申請する
もう少し補足します。
従来の旅館業法に沿うのは非現実的
実は要件さえ満たしていれば、ホテルや旅館として申請することもできます。
ただこれ結構ややこしくて、法律上OKでも条例ではNGみたいな作りになっているんですよね。しかも自治体によって条例がまちまち。
たとえば「ホテル業」として申請しようとすると、条件はこんな感じ。
【旅館業法】
洋式の構造・設備で、宿泊料を徴収して人を宿泊させる施設のうち、簡易宿所営業および下宿営業に当たらないもの。
【大阪市の条例】
宿泊者の需要を満たすことができる広さの食堂がある施設。
この例だと、「旅館業法はクリアしていても、十分な広さの食堂が無ければ、大阪市では許可が下りない」ということが起きるわけですね。
ちなみに、軽井沢町などのように「そもそも民泊自体禁止」という自治体も少なからずあります。
いずれにしても、個人が運営する民泊では条件を満たせない場合がほとんどだと思います。
簡易宿所か特区民泊申請が一般的
ということで、まずは許可を取りたいエリアが「特区民泊」の条件を満たしているかをまず確認して、該当していなければ「簡易宿所」として申請すればOKです。
申請から運営開始までの手順
- 申請前の確認
- 申請条件を満たしているかどうかの確認
- 申請書の作成・提出
- 保健所の現地調査
- 許可証の受領
上記の通り。
詳しい申請方法は下記にまとめているので、気になる方はどうぞ。
>>【民泊新法対応】民泊の許可申請の方法をわかりやすく徹底解説
今から民泊をやるならクリアしておきたい条件【1つだけ】
ここまでの話を踏まえて、もしこれから民泊のホストをやりたいと思うなら、現環境では利益を得やすい条件は1つだけです。それは、
固定費をかけないこと
これに尽きます。
「年間営業日数が180日まで」という制限がある以上、貸し出す部屋や建物に家賃などの固定費がかかっていると、黒字化は相当難しいと言わざるを得ません。
具体的には以下のようなもの。
- 居住している自宅の一室
- ローンを完済している自己所有物件(空き家・別荘)
- 【ローン < 宿泊費(売上)】になる物件
- 自己所有しているマンションの空室
- 観光地などの近隣で宿泊費を高く設定できる物件
こういったスペースで運営するのが望ましいです。
法改正後に民泊ホストをやっている友人が何人かいますが、全員が上記のいずれかです。
固定費が低ければ低いほど赤字のリスクは下がりますが、「家主不在型」だと水道光熱費の基本料金くらいはかかるので、1組もゲストが来なければ赤字になる可能性があります。
現環境における「結論」
ということで、貸し出せる部屋や建物が無い状態から民泊ホストを目指すのは茨の道と言えそうです。
逆に、使っていない部屋や建物があって、ただ空けておくのは勿体ない、最低限かかる維持費の足しにしたい、という人にはセカンドビジネスとして機能する可能性がある、ということでFAかと。
民泊を取り巻くの今後の課題
最後に、合計300組以上のゲストを迎え入れてきた民泊ホスト時代の実体験も踏まえつつ、法整備以外の部分で課題となる部分についても書いておきます。
生活習慣・文化の違い
実際に受け入れたゲストの95%以上は外国人の方々だったこともあり、この点が一番トラブルになりやすく、頭を悩まされました。
もちろんハウスルールは備え付けていましたし、壁やスイッチ、ゴミ箱など使用するだろう部分には英語で注意書きをしていましたが、それでもこんなことがよく起こりました。
- 滞在中、室内で土足生活
- チェックアウト時間がルーズ、2時間遅れとかザラ
- マンション共有部分で長時間たむろする
- 室内禁煙だからとバルコニーで喫煙、ポイ捨て
- すごい量の空き箱などを置いてチェックアウト
- ゴミの分別をしない
当たり前すぎますが、日本では常識でも旅行客の祖国では非常識、みたいなことが山程あって、自分たちだけが困るならまだしも、これが近隣住民にも影響するから問題になるわけです。
注意書きなどを十分していても全く読まない人、旅行中ということでテンション爆上げのゲストなど、本当に色々な人が来るので100%防止するのはほぼ不可能だと思い知りました。
国内の法律やルールとなると、旅行客に周知するのも事実上不可能だと思うので、これはなかなか解決が難しい問題だなと。
マンションでの民泊運営問題
マンションの管理規定などで明確に禁止されている場合はそれに従えばいいだけですが、問題は明記が無い場合。
これは「禁止されていないからOK」とも取れるので実際にやる人も多いんですが、単純に管理者側の「想定外」という理由でトラブルに発展しやすいです。
マンションの管理規約はマンションの管理人(または入居者組合)で自由に決めるものなので、法律などで規制するのはかなり難しいところです。
税金問題
民泊での利益も当然所得になるので、通常通り納税義務があります。
とはいえ、個人が民泊だけで食べていくのが難しい環境下なので、副業で取り組む人がほとんどだと思います。
そうなると、普段から自分で確定申告をしない、税法に詳しくない不特定多数の人が給料以外の収入を得るわけで、この辺りの取り締まりも課題です。
最後に
ということで、民泊の歴史や現行ルールについて解説してきました。
取り締まりが難しい反面、全国的な宿泊施設不足の解消にも一躍担っていて、意外と社会全体の取り組みになっている民泊。
大胆な規制緩和は難しい、そうは言ってもある程度容認しないと宿泊先が無い、イベント期間中は法外な値段でしか宿が取れないとなると、外国人観光客の足は遠のいて、結果的に日本経済の観光収入に大打撃…というジレンマ。
すぐに最適解は出ない問題ですが、今後は縮小よりも徐々に拡大する可能性の方が高いビジネスモデルで、まだまだリスクよりもチャンスの方が多い業界じゃないかなと思います。
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